ピアノを購入する際、ピアノの先生に相談するべきでしょうか?
ご相談されてもよろしいし、自由な立場から、ご自分に合った納得のピアノをお選びになられるのもよろしいのでは-
ピアノ店である私の立場から申しますと、とてもお答えしにくい難しいご質問ですね。と申しますのも、実際私共もピアノの先生から、購入予定のお客様をご紹介いただくことも多く、恩恵を被っている訳でして、決して否定はできない立場にございます。私共としましては、できれば全てのピアノの先生と良好な関係を持ちたい、との思いであることは偽らざる気持ちでございます。つまり、ピアノの先生方の多くは、ご自身の所有ピアノやその調律、生徒さんの楽譜購入等を含め、特定または複数の楽器店さんとお付き合いがあるか、所属されているのが一般的であろうと思われます。
また、それぞれの先生が、それぞれの好みのメーカーをご贔屓にされていて、そのメーカーのピアノ購入を強く勧めたり、楽器店をご紹介されているのが実情です。ご紹介いただきますと、楽器店と致しましても、先生のお顔をつぶすような対応はできませんので、それなりの接し方となりますから、そう言った意味ではご相談されるのもよろしいかと存じます。今ついている先生はお付き合いのあるA楽器店をご推薦され、もしも別の先生についていたとすれば、B楽器店をご紹介されるかもしれないと言うことになります。
その際、お客様にとりましては、メーカーやお店を自由に選びたいとの選択肢が狭められることは否めません。一旦ご紹介を受けてしまいますと、よそのお店やメーカーも見てみたいと思っても、中々言い出せず、そればかりか、よそのお店で気に入ったピアノが見つかりそれを購入するとなれば、たいへんな勇気が伴い、相談した事が逆にストレスとなる場合もございます。中には、怒り出す先生もいらっしゃいます。こうなれば、もうパワハラですね。何となく、お医者様へセカンドオピニオンを申し出る難しさと似たところがありますね。
確かに30年位も前ですと、お客様の多くがピアノについての知識や情報に乏しく、そのことを逆手に取って、大々的に広告をし、詐欺まがいの販売をする業者も存在しておりましたので、先生を頼ってご相談される方が多かったですね。
現在は、インターネットによる情報収集で、皆さんビックリする程の知識を持ち合わせていらっしゃいます。更に言える事は、皆さんとても上手にピアノを弾かれる方が多くて、選択能力に長けておられ、縛りのない自由な立場から、様々なメーカーやお店を廻り、ご自分に合った納得のピアノをお選びになられる方が断然多くなっております。これは自然の成り行きと言ってよろしいでしょう。
そのようなことを踏まえながら、私共と致しましては、例え先生からご紹介を受けたとしましても、お客様にプレッシャーを与えることなく、自由な立場からお選びいただくよう心がけているつもりです。どうかご自分の目と耳、そしてご試弾の上、納得の一台をお求めになられたらいかがでしょうか。

ピアノ購入を検討しています。パンフレットにハンマーの材質のことが触れてありますが、それって重要なことなのでしょうか?
また、その役割も教えて下さい。
また、その役割も教えて下さい。
音色や音量などを司るとても重要なパーツのひとつです。

そもそもピアノと言う楽器にとって、ハンマーがなければピアノとは言えないと思います。試しに、ピアノの右側のダンパーペダルを踏んで開放弦にしたまま、弦を爪弾いてみて下さい。その音はハープにも似た音がすることでしょう。羊毛で巻かれた ハンマーヘッドがピアノ弦を叩いた瞬間の打弦音があってこそ初めてピアノの音色になるのです。
テーブルを硬い物と柔らかい物とで叩き比べたら違った音がするように、弦を叩く材質が違えば異なった音色になります。木琴のマレットの 材質が、黒檀や毛糸巻きと言った硬軟の違いで音色が変わるのと 同じ原理です。
ピアノの微妙な音色の違いを司っている最も重要なパーツがこのハンマーフェルトの材質なのです。ハンマーフェルトは羊毛で出来ており、その羊毛の配合の違いや硬度、密度によって音色や幅が変わってきます。
世界的に最も有名なハンマーメーカーとしてドイツのレンナー社があります。スタインウェイやベーゼンドルファーと言った有名なピアノもこの会社に専用ハンマーを特注して使用しています。
その他に、アベル社や英国のロイヤルジョージ社が有名です。
それぞれに特長があってピアノのサイズやタッチに微妙な影響を与えるためそのピアノに合ったものが使用されています。新品のピアノを購入する際、メーカーによって異なりますので一概には言えませんが、ハンマーがまだ柔らかいため少々ぼやけた音色の印象がありますが、弾き込んでいきますと弦溝ができて輪郭がはっきりした伸びのある豊かな音色に変わって行くのです。
更に弾き込んで行きますと、場合によっては硬い金属的な音色になって耳障りになってしまいます。
そこで熟練のピアノ技術者の手によってハンマーボイシングと呼ばれる調整を施すことで、またきれいな音色に生まれ変わります。
正に究極のアナログ楽器であるピアノたる所以です。
使用頻度や経時変化によって度重なるその整音調整に長く耐えられるハンマーこそ良質なハンマーと言えるでしょう。

つまりピアノにとって、音色や音質、ボリューム、音の幅を決める重要なパーツがハンマーなのです。
ハンマーフェルトは不安定な素材であり、湿気の高い日本の風土にしっくりと馴染ませてから、この環境の中で精度を保つための加工仕上げてからアクションに組み込まれていきます。
その他、音色に影響を与えるものとしては響鳴板と弦の材質やその製法があげられます。これら全てのパーツが演奏者のタッチコントロールによって相乗作用し、素晴らしいピアノの音色となって表れるのです。
言うまでもない事ですが、同じピアノでも演奏者によって全く違う音色になるものです。
そのためにもきれいな音色が出せるようしっかり練習して下さい。
(注)写真は全てグランドピアノ用のものです。アップライトピアノ用は形状が異なります。

ピアノを習わせたいのですが、親として気をつけることは?
環境づくりのお手伝い
2番目にご紹介したお答えといくらか関連するかと思います。私が思うに、親として最も重要な役割は「環境づくり」だと思います。子供にとって一度始めた事、通い出した事(例えば幼稚園や保育園に通い出した事や学校に行き始めた事等)は当たり前の事として習慣づいてくるものです。それを親の都合で休むことが重なったりしますと、それもアリなのかと逆作用してしまいます。ですのでレッスンは極力休ませないことが大切です。レッスンは週1回、お家で練習して(さらって)きたことを先生に見て貰うのであって、レッスン日が練習日になっては中々上達しません。よって親の役目のもう一つの大きな事は、ピアノの練習をさせる工夫が必要となります。そして、最も必要なことはそれを聞いてあげる事です。小さな子供さんにとって、誰も聞いてくれない所で一人黙々と練習する等とても無理なことです。弾き始めたら炊事や家事をしながらでも聞いてあげる、間違ったり引っ掛かったりしたら「そこをもう一度やってごらん・・」等と、やり取りをしてあげる事で10分や20分すぐに経ってしまいます。だからピアノはいつも見聞きしてあげられるリビング等に置けたらいいですね。これを毎日続けることで、毎週○曜日はピアノのおけいこ日として、生活サイクルのひとつとして定着する事になります。また、レッスンに通う時、テキストが入ったバッグも自分で持たせることで自覚が芽生えてきます。時にはお家での練習を怠けて、弾けてないままレッスン日を迎えることもあるでしょう。でも、大人と違って平気(?)でレッスンにやって来ます。ここが子供のいいところです。決して叱ることなく、休まずに通ってくれることを評価してあげるといいですね。
どこまで続くのか、止めるかも知れないと言う不安は誰しも当然の事ですが、それも多くの場合、親である自分に置き換えた場合を想像しての不安のように思われます。大人の方が習い始め出しますと、練習を怠けたままレッスンに行くことは先生に対して申し訳ないと思う気持ちが勝手に敷居を高くしてしまいます。その結果、仕事が忙しいとかの理由をつけて休むことが度重なり、いつの間にか止めてしまった・・となってしまいます。
休ませない、ピアノの前に座らせる、聞いてあげる、かまってあげる、誉めてあげる、励ましてあげる等はどなたにもできるし大切な役割だと思います。当然の事ながら、早い時期にピアノを揃えてあげることや時にはコンサートに連れて行ってあげることも重要な環境づくりのひとつでしょう。
お家でしっかり練習すればレッスンの時上手に弾けて先生が誉めてくれ喜んでくれます。その結果もっと練習してもっと誉めてもらおう、喜んでもらおうと言う気持ちになります。いわゆるプラス回転して行くのです。発表会で上手に弾けたり、コンクール等に挑戦意欲が出てきますと、もうしめたものです。基本的に勉強もスポーツも同じ事だと思います。
家族による環境づくりがその子を健全に伸ばして行くことに繋がります。
ただ、どんどん上手になって行けば行くでまた違った悩みも増えてきますが、取り敢えず幼児、低学年期の親の役割のひとつとして自分なりの私見を述べさせていただきました。

習い始めだから、初心者用とか練習用ピアノで良いと言われたのですが・・・
最初からいい音のピアノで練習させるべきだと思います。
まずもって初心者用とか練習用ピアノってどんなピアノを指して言うのでしょう。推測ですが、一部の大型ピアノ店が廉価なピアノを安売りするのに正当化するために便宜上、表記しているもののことだと思いますが。そもそも家庭で使うものは例えグランドピアノであれ、練習用ピアノと言えるわけですが、習い始めだから初心者用ピアノで良い、と言う発想がいかがなものかと思います。幼児期の子供さんの耳をあなどってはいけません。凄い音感を持っていますし、一番発達する年齢だとも言われています。その大切な時期こそ正しい音(良い音、きれいな音等)を聴かせるべきであって、もし間違った音(汚い音、狂った音等)で育つとその音がその子にとって、ぜったい音となってインプットされてしまいます。人を含め動物は、最初に見聞きしたものが一番強烈に記憶されると言われています。だから、よくあることですが、音の狂ったピアノで長く弾いておりますと、その音がその方にとっては基準になってしまい、正しく調律した後のピアノに違和感を感じてしまわれることがあります。では正しい音とはどんな音なのか、と言いますと一番分かり易いのはCDやコンサートで聴く音です。この音を良く聴いて自分の音の基準にしたらいいと思います。
よくレストランや結婚式場などで耳にするピアノの音には調律が施されてない狂ったピアノが結構多いので、こちらはあまり参考にしないことです。
つまり、習い始めだからこのピアノでいいと言うのではなく、新しいとか古いとか、高いとか安いとかよりも、いつも正しい音に調律・調整しておくことが大切だと思います。
そのことを踏まえた上で、長く共にするピアノですので、家族の一員にふさわしい1台をお選びになったらいいと思います。

大きいピアノはいいピアノ?
必ずしもそうだとは言い切れないものがあります。
アップライトピアノの背の高さ、グランドピアノにおいての奥行きの長さのことを言われていることかと思います。総論としてはその通りだと言えるでしょう。長い(高い)と言うことはその分低音域の弦を長く張れると言うメリットがあります。と同時に響鳴板も広く採れるため、その分豊かな響きや音量が得られることになります。
そう言った意味合いから大ホールで使用されているフル・コンサートピアノは274cm以上の長さがあります。ベーゼンドルファー“インペリアル”にいたっては290cm、加えて鍵盤が97(最低音域からさらに1オクターブ通常使われない黒く塗られた9つの鍵盤)あり、それだけ響鳴板も広く設計され豊かな表現力の源となっています。
しかしながらコンサートピアノと違って家庭用練習ピアノにおいては、その長さ(高さ)を補う様々な取り組みが各メーカーによってなされていて、一概に大きいからいいとは断言できないものがあるようです。
基本設計の改良が進み、響鳴板やハンマー、弦等に、より高質な材質を使用することでむしろ小さくてもいい音色のピアノが多く発売されているようです。確かに、各メーカーの価格設定を見ましても、サイズの大小は必ずしも価格に反映しているとは言えないようです。パンフレット等に記載されている仕様でよくご確認されるといいでしょう。
最近は、むしろ「小さくてオシャレで質の高いピアノ」が求められるようです。
ちなみにこの傾向はいち早くから欧米では顕著で、アップライトで言えば110~120cmクラスが主流だとのことです。

グランドピアノとアップライトの違いを教えて下さい。
連打やタッチ等に大きな違いが・・・・
ご存知の通り形が違いますね。その形状の違いから構造上、様々な点で違いがございます。大きく違う点は連打の差でしょう。アクションの構造の違いから来るもので、GPの場合ハンマーが弦の下から叩く機構の為、次の音を叩く準備がすぐに整うのに対して、UPのハンマーは弦を横から叩く機構のため打弦後ハンマーが元に戻るにはスプリング等の力を借りらなければなりません。あるメーカーの実験によればGPだと1秒間に15回前後の連打が可能だとされるのに対し、UPはその半分程度の能力しか無いとの報告がなされています。また、それに伴うタッチにも大きな違いがあります。鍵盤は梃子の原理を応用している訳ですがGPはバランスピンを支点としてシーソーの割合が2:1に対しUPは3:2の割合で作られています。そのためGPの方が運動性に優れ、指の動きが的確にアクションに伝わります。よってすっきりした感じのタッチとなって表れます。言い換えれば鍵盤に加えた2倍の力がアクションに伝えられるGPに対しUPは1.5倍でありエネルギーのロスが大きいと言う訳です。これらは、導入期はあまり感じませんが、ソナチネ程度を弾くようになりますと影響が出てまいります。
その他、低音域では弦の長さの違いから、当然音色や音量の違いもあります。更にソフトペダル(シフトペダル)の有無による表現力の違い等々、まだまだ他にもありますがちょっと専門的になりますので代表的な点だけに留めます。
スペースさえクリアできれば最初からグランドピアノをお勧めしたいところですが・・・

4歳の女の子です。ピアノ教室に通っていますが、
いつ頃ピアノを買い与えたらいいのでしょうか。
いつ頃ピアノを買い与えたらいいのでしょうか。
一日も早いに越したことはないと思います
ピアノの「おけいこ」は、おけいこ事の中でもその進度がけっして早いとは言えず、むしろ遅い分野に入るでしょう。ちょっと習っただけで誰でもすぐ弾ける訳ではありませんね。だから面白いのであって、 “ピアノが弾けていいね”と羨ましがられたりするのです。4歳前後からおけいこを始めて、中2、中3までの約10年、と言うのが一般的でしょう。実際は中学生になると、部活や学習塾等との時間の競合で続けたくても中々続けられないのが実情です。だから、この短期間に集中しておけいこしなければなりません。よくいつ止めるか分からない・・・、続くようだったら買ってあげるけど・・・、とか言われるお客様がいらっしゃいますが、その気持ちも分からないではありませんが、おけいこはある一定期間だと言うことを認識されて、早く与えてやる方がいいと思います。遅い分進捗状況にも影響しますし、第一ピアノが活躍する期間が短くなってしまいます。
おけいこに必要だから購入する訳ですが、僅か10年しか使わないのに数十万もの新品ピアノは高いと感じるか、そうではないと感じるかはそれぞれでしょう。ただ、おけいこを止めた後の方が遥かにピアノの存在期間が長いものですから、そこの部分を捕らえて、「今ではあの家のピアノはほこりを被ったままになっている」と非難されることになり、これから購入しようと考えてる人には躊躇材料になってしまい誠に残念でなりません。ピアノにとっては、ご主人様は今休息を取っておられるのであって、その間もいつ思い出して語りかけてくれてもいい音で応えようと待っているのです。もしかして、その方は20年後の娘さんかもしれませんね。そんな長いスパンで見たら、数十万のピアノがけっして高いとは言えないと思うのですがいかがでしょう。
そもそも10年間欠かさずレッスンに通う根気だけでも、教育的見地から見て充分な価値があったとも言えるのでは・・・ピアノの側になった気持ちになればそんな気がしてしまいます。
それから私の持論で恐縮ですが、習い始めるのとピアノを購入するのとどちらが先か、と言えば勿論「ピアノが先」でしょう。物心付いた時には既に自宅にピアノがあった・・・例えば「お母様が使っていた」ようなご家庭の子供さんの進度はすごく早いですし、兄弟姉妹の場合でも下のお子さん(この子にとってはピアノが先)の方が一般的にスジがいいと言われるのも、環境がごく自然に整っていればこそのことだと言えるでしょう。ピアノは早い時期にさりげなく・・・けっして買ってやるから止めたらダメよ、とプレッシャーを掛けずに。

購入するなら(アコースティック)ピアノと
電子ピアノのどちらがいいでしょうか。
電子ピアノのどちらがいいでしょうか。
予算と環境が許せばピアノかな・・・
基本的に違う楽器だと思います。それぞれに良さがあって用途によっても違うし、一概にどちらが良いかとの判断は難しいところです。電子ピアノは今や完全に市民権お得た楽器だと言えます。ただここでは、お子さんがピアノのおけいこをされていて、買ってあげるとしたらどっち?と言う観点からお答えしますとやはりピアノがいいでしょう。現在の電子ピアノは当初難があったタッチについてもかなり改良されており、しかも本来のピアノ同様、低音部はずっしりと高音部にかけて軽やかにコントロールされ、また機種によってはアフタータッチまで作り出されておりピアノのおけいこの代用品としてはさして問題はないと思います。ただ、大型電器店などが取り扱っており、よく「ピアノは定期的な調律が必要だが電子ピアノには必要ない」と言われるようですが、私の考えはその部分が違います。電子ピアノの欠点は実はそこにあると言えるのです。
生のピアノは時間と供に音が狂ってまいります。弾く本人はその狂いを感じなければ楽器をやってる意味がありません。殆どの楽器は演奏者自身が狂いを感じ取って自分で調整するものです。ピアノは自分でその狂いを直せないので調律師と言う方が存在する訳ですが、電子ピアノでおけいこを続けている人は音が狂わない分その微妙な違いが分からないまま育ってしまう恐れがあるのです。音が狂っていることを感知する聴き分けが大切です。その他に生ピアノに存在する倍音があるないとか、ペダリング奏法上の違いとかありますが、導入時期と言えどその部分(音の変化)は小さい時からけっして無視できないことだと言えます。
予算と設置環境が許せばピアノがいいのではと思います。